『ゼロ・グラビティ』観てきました。
TLでの評判が非常によく、今年最高、いや今までの映画で最高!という人もいて、非常に気になったのです。
予備知識ない方がいいという話もよく見かけましたが、うーんどうだろう、僕は多少知ってても大丈夫だと思います。シナリオより、体験が重要な映画なので。
というわけで、ネタバレレビューを。
ただ、簡単にひとつだけ。
圧迫感・緊張感の凄まじすぎる映画なので、精神的に不安定な方や呼吸器系の病気がある方は、行かない方がいいかもしれません。
『ゼロ・グラビティ』、話としては凄いシンプルです。
宇宙で船外修理してたら、スペースデブリのせいで事故発生。船員の女性が宇宙空間に抛り出されるものの、仲間の死や幾度もの危機を乗り越え、なんとか地球に帰還する。
登場人物もたった3人しかいません。あとは音声のみ。ほとんどライアン役のサンドラ・ブロックの独擅場。
最初の修理のシーンから、「無重力で宇宙に出て修理とか、一見優雅そうに見えるけど、すんげぇ怖いよなぁ」と思ってたら、見事に事故。
無音の誰もいない暗闇の世界で、未来永遠漂い続けるというのは絶対の孤独で、「無」に限りなく近い状態ではないでしょうか。とんでもない絶望なわけです。遺骨を拾うどころの話じゃない。二酸化中毒で意識を失ってから死ぬから、死に方としては楽なのかもしれませんが、死ぬまでに気が狂いそうになるほどの恐怖があります。
『火の鳥』だったかな、宇宙に抛り出されて宇宙服着たままミイラ化、みたいのは何かで読んだ覚えがあるので、余計その怖さがベースにあります。
矛盾するようですが、『ゼロ・グラビティ』は宇宙という広大な舞台でありながら、もの凄く狭い世界の話です。「狭い」というのは、人間が生きていける空間・条件が極限られているということです。無限の空間を舞台にしていても、生存可能な空間はごくわずかしない。それがとんでもない閉所感と緊張感をを産み出します。ほんとに息が詰まる!俺今呼吸してる?できてる?と不安になるくらい。なので、精神的に不安定な方や呼吸器系に病気がある方は、観ない方がいいと思います。
SFソリッドシチュエーションスリラーとでもいうんでしょうか。スプラッタ的に血しぶきが舞ったり、暗闇からエイリアンが突然襲ってくるとかそういう恐怖じゃなくて、存在や生自体を否定されるかもしれないという精神的な恐怖感があります。
映画の内容自体もですが、「映画館にいる」というのが、宇宙区間にいるのとかなり近い状態で、そういった意味でも広い暗闇である映画館で観た方がよいでしょう。もんのすごい濃密な体験ができます。覚悟して行った方がいいです。息苦しくなるくらい没入感が凄くて、もの凄く疲れます。後からいくつかレビューを観たら、長回しをしているとのことで、それも息苦しさを演出する要因になっているのでしょう(そういうのを気にする余力がなかった)。
エンドロールで自分が息ができるか思わず確認しちゃったし、席を立ってもちょっとふわふわした感じで、重力あるよ・・・な・・・?と本当に宇宙に行ってきたような感覚に襲われました。
しかも渋谷TOEI9Fで観たので、エレベーターで地上に降りたとき、「思う存分息ができる、重力がある!地球に還ってきた!!!!」と主人公と凄いシンクロしましたw なので、できれば高い所にある映画館で観た方が面白いですw
ただ、これ観ると宇宙は行きたくなくなります!w というか、もう『ゼロ・グラビティ』で宇宙を一生分楽しんだからいいや!ってなるw
時間的に3Dの回ではなく、2Dで観たんですが、それでもとんでもない迫力でした。内容が良かったら3dでも観ようかと思ってたんですが、正直むちゃくちゃ疲れたし、トラウマレベルの壮絶な宇宙体験ができてしまったので、3dは観るのが怖いですw
幾多の危機を乗り越え「どっちだろうと、誰のせいでもないわ! 結果はどうあれ、これは最高の旅よ!」と悟ったライアンのセリフの強さ。なんかね、人生、自分で切り拓いて、精一杯生き抜くしかないんだよね。宇宙でたった一人、という絶望的な極限状態を生き抜き見事生還したライアンの言葉は、非常に重かったです。
映像美は圧倒的に凄いんですが、限られた舞台、登場人物の少なさと、3ピースバンドめいた映画です。宇宙的な広がりのある楽曲が多いACIDMANを彷彿させるものがあります。宇宙空間のどうしようもない孤独と絶望、重力と空気のありがたみ、生きていく強さを感じる大傑作でした。
どうでもいいんですが。
衛星の破壊によるスペースデブリ(宇宙ゴミ)をテーマにした作品には『プラネテス』という名作がありますが、いやー、これからの時代ホントどうなんでしょう。ロシアの衛星を爆発させたせいでアメリカが被害被って、アメリカが中国の衛星乗っ取って帰還してるんですが、いろいろ問題ないんでしょうか。外交問題として地味に気になりましたw