「シリアスな笑い」として、意図しない希代の傑作映画『ガッチャマン』レビュー(ちょいネタバレ)

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超映画批評にて、デビルマンの2倍の点数(100点満点中4点)という超高得点をたたき出し、ヤフー映画でも罵詈雑言の嵐のガッチャマン。
僕は79年生まれなので原作は観てないんですが、悪評の嵐に期待が高まりつい公開初日に観に行ってしまいました。
感想を書くのが苦手で、「つまらない」の一言で終わる映画だったり、特筆すべき所はないけどそこそこ面白い映画だったらどうしよう、とかよく分からない不安を覚えながら、期待していいのかよくないのかわからない状態で観に行きましたが・・・。

予想以上に「楽しめた」!!!
地雷なのは間違いない。でも、地雷を踏み抜いた甲斐があった!!!

監督は意図してないはずなんだけど、「シリアスな笑い」としてはかなり傑作。設定に破綻や空回りが多くてツッコまざるをえないのです。酒飲みながら仲間内でワイのワイのとツッコミ入れながらDVD観るのには最高。

『姑獲鳥の夏』に匹敵するエンドロール後の衝撃のラストは、映画の成績次第ではDVD版ではカットされる可能性が高いので、是非とも映画館へ観に行ったほうがいいです。本編でも何度も笑いを堪えていたんですが、見事なトドメを刺されました。あれは反則。映画館で体を奮わせて大笑いました。それまででも充分楽しめたんだけど、あのシーンのために1800円払ったといってもいいくらい。

全体的なことをいうと、たとえばミステリなら「密室状態の雪の山荘で人殺したら、容疑者絞り込まれるんだから不利じゃん」とか、「そもそもトリック使う必要ないよね」とか、犯人に都合が良すぎる妙な偶然やら、いわば「物語であるためのご都合主義」というのはどんな映画にもあると思います。
ある程度のご都合主義はしょうがないです。が、作品内のロジックが観客に伝わりづらく、設定はきちんとあるのかもしれないけれど、少なくとも観客には破綻してるようにしか見えない部分多々あり、映画作品として非常によろしくない。
ダークヒーローモノだとか、暗いとか言われてますが、僕はそういった詰めが甘い部分を一人笑いながら楽しんでましたので、ほとんど暗さ(というか重み)を感じませんでした。いや、たしかに重くみせようとしてるんだけど、演出がおかしくてツッコミに忙しいので、重い所かひたすら軽い。

最初の方で「21世紀の初め。謎の侵略者によって、わずか17日間で地球の半分は壊滅状態に陥った」(パンフより)と剛力さんの説明ナレーションが入るんですが、次のシーンで何事も無かったように空撮で今の平和な新宿が映し出されます。ヨーロッパは敵のギャラクシターの支配下に落ちたものの、日本はまだ大丈夫という設定だそうですが、「先進国の中でアメリカと日本のみが無事で」みたいなワンクッションがあればいいのに、いきなりまったく無傷な新宿が出て来るので、「今のナレーションは何だったの!?」となります。

そういう意図してない掌返しや、矛盾めいたのが他にもあって、原作にはない映画オリジナルキャラの「カークランド博士」ってのが出て来るんですが、てっきり外国人かと思ったら、光石研、日本人。え、何がどうカークランドなの・・・?
それどころか彼は後半、悲惨な役回りになるんですが、ギャグにしか見えませんでした。

予告編があまりにもつまらなくて、何がやりたいんだろう?と不安だったんですが、ツッコミ所の多い展開を経て、衝撃のラストに全部持ってかれました。
新宿バルト9で観たんですが、観客は席の半分くらい。エンドロール途中で帰った人が続出したのは、やはり呆れて席を立ったのでしょう。あああ、一番いいシーンを見逃してる。。。

ツッコミ箇条書き。(この辺からネタバレあり)

・ヘッドギアつけてる少年(健の少年時代)が安っぽいことこの上ない。
・敵にやられると何故かクルクル回転する。カンフー映画か!
・失敗したバッドマンにしか見えないベルクカッツェの登場シーン
・ガッチャマン最初の登場シーンで、止め絵になって各キャラの紹介があるんだけど、失笑を禁じ得ない。ダサい。
・喫茶店でハッキングした画面を見せちゃう甚平。
・それを見て「今度三つ星レストランのレシピをハッキングしてよ」と微妙な日本語をホザく剛力さん。
・他にも甚平くんは「忍法なんちゃらかんちゃら!」と決めセリフを吐くも、浮きまくって観客が失笑を禁じ得ない。まあ甚平役の濱田くんの演技が浮きまくってるのはこの際許そう。まだ13歳だし。
・というか、「科学忍者隊」って肩書きは無くなってるし、「忍法」云々てセリフはまっっっっったく必要なかったよね。
・ただ、サルだのゴリラだの、竜役の鈴木亮平とのカケアイは、全体的に暗めな映画の中で、白々しく浮きつつも悪くはなかった。
・その緑のゴリラこと竜、あだ名からパワーキャラかと思いきや、オバカなのはいいとしてただのやられキャラ。とりあえず吹っ飛ぶ。竜役の鈴木亮平が変態仮面の人だと後から知って驚くなど。別の意味で痛かった。
・いかにも演技臭い大げさな悶えやキザなセリフが、狙ってないはずなのにもはや怪演の域に達している綾野剛。
・シリアスなシーンの直後に突拍子もないことを語り出して、観客をドン引きさせる名人、剛力さん。
・パンフのキャラ紹介読んだら、「情緒不安定な弱さ」があるそうだが、単純に空気読めない子だと思います。
・いちいち鼻につくキザさが笑いを誘わざるをえないという怪演を魅せる綾野剛さんと、脳天気で頭パッパラパーな剛力さんは、ある意味ベストキャスティング。すんげー合ってた。
・敵(ただしザコ)と向いあう緊張感のあるシーン。でも舞台はタイムボカンの人形とかが置いてあるサブカル系オモチャ屋(?)。オマージュのつもりか、「お仕置きだべぇ」とオモチャ鳴る。。。。
・「俺が見えるか悪党共。実態もなく忍び寄る、白い影が」とアップでモロ実態見え見えの状態で決めゼリフを吐く健。決まらなすぎ。
・お約束的な時限爆弾の解除シーンで、迷うことも無く て き と ー に プラグ(赤・黄色・白と映像端子っぽかったんだけど)を外す剛力さん。だが、それだけではなかった・・。ていうか「CAUTION」てご丁寧に書いてなかったかあの爆弾?
・そもそもビルくらいデカい車輪型のモンスターのキャタローラーに、解除可能な時限爆弾が搭載されてる意味ってなくね?そのまんまビル踏みつぶせよ。
・東京は現代のままなのに、そこだけ未来っぽいデザインでまわりから浮きまくるISO(国際科学技術庁)の本部。
・ギャラクターのコードネーム「ラストスーサイド」って日本語にすると「最後の自殺」なんだけど、「表現」とわからなくはないけど、英語でも日本語でも言葉としておかしくないか?
・ある意味原作に忠実なんだけど、カツラにしか見えないモッサリ頭の南部博士役の岸谷五朗。
・ていうかこの人ガッチャマンらに対して、命令・業務連絡しかしてなくね? もうちょっとガキどもに人として関われよ。もっといい味出せる役者さんのはずなのに、岸谷五朗の無駄遣い。
・敵内部での覇権争いに負けて人類側に 亡 命 を 希 望 してくる敵キャラのNo.2。えっと、亡命!?
・仮面パーティーのシーンがあるんだけど、あれストーリー内で仮面つける必然性あったっけ?
・パーティーに侵入するのに指紋認証のパスワードが必要なんだけど、それを直前にハッキング。段取り悪すぎ。ハッキングしてから行けよ。
・パーティーには代理で侵入するんだけど、そのためにわりと酷い事をする正義のヒーロー。
・任務中よりも己の恋愛が大事なスイーツ・ジュン。
・「イリヤ」って女かと思ったら、男。というか、仮面つけてても誰か丸わかりのごっつい中村獅童。
・初登場シーンが片言の日本語なので、外国人なのかと思ったら、のっぺりアジア顔の日本人ナオミ。どうやら途惑った演技だったらしい。
・ジョー、座席満員のバスの中でプロポーズするなよ。しかもよりによって三角関係のライバルである健がいる目の前で。ナオミも「いいの?」て顔で健見るなよ。健がダメっつったら断るんかよ!「ジョーは自由人なんだから」ですますなよ。
・フラグ立ったと思った瞬間へし折る。早すぎる。ていうか、健のトラウマが自業自得だったという。。。・観客視点ではわかっていても、各キャラは直接話してないからその話題は知らないハズなのに、と思ったら、どうやら基地内では無線で通じ合ってるみたい。なのに、監視カメラはなくてピンチの時には誰も駆けつけないクソセキュリティのISO本部。
・本部にある謎の広場で敵と二人きり。当然邪魔は入らない。
・都内のはずなのに、本部から出てすぐの断崖絶壁で身内話をするガッチャマンたち。何処だここ。どう見てもどっかの岬。
・敵地に侵入して決めのシーンなのに、息つく間もなくさっそく敵に攻撃されて吹っ飛ばされる緑のゴリラ。見せ場がない。
・ガッチャマンらが何故か操縦できちゃう敵の巨大移動要塞。てかあれで宇宙行けちゃうんだ!?
・タイムリミットがあるのに、上映時間ではなく明らかに劇中の時間でタイムリミットを過ぎている。なのに余裕で友情ごっこをしているガッチャマン達。

良かった点

・ベルクカッツェの設定は面白かった。モンスターのデザインもかっちょええ。

真面目にダメな点

・照明かメイクのまずさが原因なのか、顔が汚い。お肌が凄い気になる。大画面のせいだろうか? 綾野剛は特に若いのにシワも目立った。よく言えばトラウマクールキャラの演出に思えなくもないが、松坂桃李も妙にアザ黒くて不健康に見えたので、たぶん対応できてないor敢えてしてないんだけど、演出としてはよくない。
・なんか妙に顔が平べったいのが目立った。なんだろう、アメリカ人向けに、日本人顔らしい日本人で映画撮りました、的な感じ。揶揄されてるようで軽く不快。こんな感じは初めて。
・『デビルマン』と並び称される『CASSHERN』で、数少ない良い点として評価されていたカッコ良かったマスク。劇中、早々に捨てたことに批難があったが、マスクをして居ると表情がわからず演技上よろしくないという擁護もあった。それを実感。『ガッチャマン』ではずっとマスクしっぱなしで、目元が観づらくてよろしくない。それ以上にハマってない。
・上記3点もあり、各シーンが絵にならない。とにかく絵にならない。安っぽくてダサい。
・CG単体の質は高いと思うんだけど、画面に馴染んでない。最初の新宿での戦闘シーンで、ビルの谷間を飛んだり走り抜けたりするシーンがあるんだけど、ヘンにアニメっぽい色使いになってて浮いてる。公式サイトの顔が合成っぽいんだけど、あんな感じが多い。

最後に

キワモノが好きな方、作品へのツッコミが好きな方は観に行くとかなり満足します。観たのがもうだいぶ前なので『デビルマン』はだいぶ忘れかけてますが、『デビルマン』よか演技は酷くないので、まだ観られる映画だと思います。
ちなみに『CASSHERN』はDVDとテレビ版で二度観ました。一度目はCGや戦闘シーンは見応えがありつつも監督の暴走っぷりが目立ちましたが、二度目はわりとテーマがしっくり来ました。

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