コロナ雑感4 安全安心な五輪なんて存在しうるのか。

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都内は緊急事態宣言の最中、五輪が始まってしまうようだ。まさか開催までにこれ以上、不祥事はないだろうと思っていたら、突如公表された開閉会式のスタッフの一人、小山田圭吾の過去のいじめ問題が大炎上して、謝罪文が出された。
そもそも振付家のMIKIKO氏の辞任問題やら「オリンピッグ」やらで一悶着あって、いわば因縁の開閉会式だったわけだが、まさかここまできて不祥事がまた起きるとは思わなかった。小山田の件はネットで何度か目にしたことがあったので知っていたが、残念ながら才能に反して少なくともパラリンピックには相応しくないだろう。小山田はもちろん、選定者側の落ち度でもある。
しかしこの、ことごとく踏まないでいい地雷を踏みぬいていく特攻精神は、何なのだろうか(五輪開催自体が、最大の地雷だが)。ロゴに新国立にその他諸々、ケチがつかなかったのは、マスコットキャラクターくらいじゃないだろうか。

未読で恐縮だが、『東京に原発を!』なんて本もある。「原発が安全なら、東京湾にでも作れ」というのは反原発派がたまにいう常套句だが、原発までいかなくても、「安全・安心な五輪」とやらが東京で行われる(正確には都内だけではないが)のは、広瀬隆もビックリじゃないだろうか。「本土決戦」と言っていいだろう。
「バブル方式だから大丈夫」らしいが、「ぼくのかんがえたさいきょうの安全・安心な五輪」をまとめておきたい。

・選手は選手のみ(何らかの形で一般客とは隔離された状態)での来日。
・誰であろうと、入国後、14日隔離をした後、PCR検査を行う。
・選手、コーチ等競技に関する直接の関係者、その他運営関係者、国内のボランティア、マスコミは可能な限り全員にワクチン接種(当然ワクチンが効いてくる2回目接種後2週間後から、業務等に関わる)。
・五輪開催前の宿泊先などの従業員も、可能な限り全員ワクチン接種。
・無観客。IOC関係者だろうが何だろうが、観客を入れない。

こんな所だろうか。まだまだ厳密・厳格に行おうと思えばできるだろうが、ここまで書いて、「そもそも陸上などの単独競技はともかく、集団競技、逆にコンタクトスポーツはバブル内でクラスターが発生して選手が出場できなくなったら、元も子もないのでは?」という疑念が湧いてきた。ワクチンを接種したからといって、ゼロになるわけではない。

そもそも少なくとも有観客について、すでに6月に行われたサッカーのヨーロッパ選手権でも、観客約2000人がコロナに感染したという結果が出ている。


それによりますと、6月11日から28日までに、ヨーロッパ選手権に関連して感染が確認されたスコットランド在住者は1991人でした。

感染は、6月18日にロンドンのウェンブリースタジアムで行われたイングランドとスコットランドの試合に関係した人たちに集中していて、感染者の3分の2にあたる1294人は、この試合の前後にロンドンを訪れていました。

このうち、397人はスタジアム内で試合を見ていたということです。


サッカー ヨーロッパ選手権 スコットランド 約2000人感染確認 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

また、マスコミ関係でもロイター社の記者が入国時は陰性だったものの、クリスマスパーティーに参加、参加者9名のうち3人に感染させている。

 だが、A氏は12月25日に港区内のパブで友人ら9人とのパーティーに参加。このパーティーの参加者から1名、A氏の婚約者の2名が年末から年始にかけて発症した。正式な検査を受けたところ、2人は変異株による感染だったことが判明。2人ともA氏の濃厚接触者にあたり、「状況証拠から、この男性(A氏)から2人に感染したと推定しています」(厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の担当者)。ただ、A氏はコロナに感染はしたが、発症から時間が経過しておりが、調べられるウィルス量が少なく変異株を検出できなかったという。

“待機破り”でコロナ変異株が感染拡大 ロイター記者が退社していた | 文春オンライン

なんなら昨日、ウガンダの選手が「日本で働きたい」と、脱走したというニュースまで飛び込んできた。
不明のウガンダ選手、部屋に残したメモ 駅で切符買う姿 – 東京オリンピック:朝日新聞デジタル

世界中から、万単位で人が来る。いろいろな事情や背景、倫理観を持った人がいるだろう。
「バブル」というと、どうしても金融の方の「バブル」を思い起こしてしまうが、始まる前からはじけている、ただのザルだった。

一方、自分以外の人の五輪に対する意識が気になって、Twitterでアンケートをとってみたのだが、面白い結果になった。

15票程度なので、あまり参考にはならないかもしれないが、五輪を開催後、「新規感染者が増える」と思う人が33%、「影響はあまりない」という人が53%だった。

が、その一方、こちらは28票だが、「日本人が金メダルを獲ったら嬉しいか」という質問には、「評価しない」が50%もいた。

「五輪で観戦者は増えるだろうが、選手の活躍はまた別」と切り分けて考えている人が多いだろうと思っていたので、特に後者の結果は以外だった。「選手を評価しない」というのはわりと過激派だとばかり思っていた。絶対的な五輪の拒絶だ。
感染拡大の不安以上に、「今、五輪をしなければいけないのか」という怒りが、金メダルさえも評価しないのだろう。

個人的には、国内はもちろん、国外(文字どおり全世界、世界各国への)感染拡大の一因になると思っているし、選手の活躍も評価しない。普段、スポーツ観戦はまったくしないのに、五輪やら国際大会は観てしまう「にわか」だが、今回の五輪は一切観ないつもりだ。
島国の利点を活かして、水際対策が重要なのに、入国者にまともな隔離もせず、万単位で世界中から人を呼び集めようなんてイベントを、今、開催するなんておおよそ狂気の沙汰としかいいようがない。スポーツじゃなくて音楽フェスだろうが、なんだろうが同じだ。
甲子園など、国内だけでのイベントであればまだ理解もできなくはない。
ミュージシャンのライブツアーも、野球やサッカーだって、開催しなければ関係者は生活ができない。感染対策をした上で、実績を積み上げていくしかない。今年5月に開催された野外フェスJAPAN JAM2021は「集団感染(クラスター)発生はありませんでした」という結果を出している。一方、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021は茨城県医師会の要請で中止となった。地元医師会との事前の連携がうまくいっていなかったのも一因としてあげられている。

国内の医療リソースは限られている。都民の俺としては、五輪中に自分が事故なり急病にかかっても、まともな医療を受けられずに野垂れ死ぬリスクさえある。金メダルを獲っても、そんなものは血塗られた金メダルとしか思えない。
元々、近年の猛暑も心配されていたが、今年は見事なまでに酷暑となりそうだ。なんならコロナ感染より熱中症の方がリアルに危険だろう(特に選手以外の関係者など)。
極論なのは百も承知だが、全選手がボイコットすれば、いくらIOCや政府、東京都が何を言おうと、五輪は「開催できない」。ボランティアが全員辞退してもそうだろう。
そういう意味では、まさしく「一人ひとりの力に支えられている」。

少々話が飛ぶが。
「ブラックサイト」(2008年公開)という映画がある。主演のダイアン・レインが演じるFBIサイバー捜査官ジェニファーが、アクセス数によって人を死に至らしめる殺人中継サイトと犯人を追うサスペンスだ。劇場で観て明確に覚えているわけではないが、犯人に拉致された被害者が水槽に閉じ込められている。アクセス数に応じて水量が増え、被害者が溺死するというような装置がいくかも出てくる。一人ひとりの小さな好奇心でも、数が増えれば人さえ殺せるというテーマだ。
参加者がいることで、確実に死に至る人々がいる。そんな五輪を開催すべきなのか。

アスリートには当然、悪意はないだろう。
クーベルタンIOC2代目会長が「参加することに意義がある」と語ったそう(正確にはペンシルベニア大主教であるエセルバート・タルボットの発言らしい)だが、今回は「参加しないことにこそ、意義がある」のではないか。

五輪後、感染者が増えなかったとしても、それは当然求められるべき結果でしかなく、賞賛には値しないと思う。そもそもそんなリスクの高い賭けを、国民の命を賭け金にして行うべきではないからだ。銀行強盗で得た金で親の手術代を稼いでも賞賛されるべきではないのと同じだ。根本が間違っている。

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