フリーのイラストレーター西川さん(@nishi1010kawa)のツイートを何気なくRTして、その後僕が実際にあった怖い契約書の話をしたら思いの他RTされたので、対策も含めてもうちょっと詳しく書いてみます。
元ネタはこちらです。
実話。
ここの社員でもなく、給料も保障もなにもないフリーランスのイラストレーターです。
この条件を受けると餓死する。 pic.twitter.com/Q3bYvsN7Bq— 西川(アフィ使用お断り) (@nishi1010kawa) April 30, 2016
んで、その後の僕のツイートがこれ。
契約書絡みだと、業務委託契約で「なんかあったら賠償責任を無限に負ってね(*´∀`*)」てのがあった。普通は「互いの協議の上」とかよい会社だと、請負額の金額までとか上限決めてる。デザイン・コーディングだけでなくディレクションもやる予定だったので(続
— たけ(忙) (@take_it02) May 1, 2016
「こりゃ都合のいいしっぽ切りになりかねない」と保留してたら、声かけてきた社員がその月の末に辞めた。社員だったら個人に賠償させるのはよっぽどじゃないと無理だがフリーなら押しつけ放題だわな、まして人手が足りないのなら炎上しやすいし、と怖くなってフェードアウトさせてもらったことが。
— たけ(忙) (@take_it02) May 1, 2016
業務委託契約、NDAは何件か結んでるけど、そこまで強気な契約書だったのは初めてだった。面倒だけど、面倒くさがらずにちゃんと目を通して、ヤバいと思ったら法律事務所に相談するなり、何なりした方が後々面倒にならない。弁護士は30分5000円、それで後々のトラブルが解消できるなら安い。
— たけ(忙) (@take_it02) May 1, 2016
一方に不利な契約は、お互いにとって良い取引にならない
免責的に最初に明記しておきますが、別に特定企業を攻撃したいわけではないです。ただ、契約時、特に賠償などに関する事項で、フリーランス側に圧倒的な不利な契約書を出されてしまうと、こちらとしても戸惑ってしまいますし、疑心暗鬼にならざるを得ません。お互い良い取引にならないです。
法人の場合、株式や合同会社、また役職によって責任の範囲(有限責任)がありますが(でも社長は実質無限責任だったりするらしいすけどー 棒)、フリーランス=個人事業主は無限責任です。つまり個人的に資産を売っぱらったり、借金でも何でもして支払わなければいけません。
そもそも裁判沙汰になったら、通常の業務にも支障が出てきますし、万が一多大な賠償金を払うことになったら、自己破産するしかなくなります。フリーランスが「自由」と引き替えに得ている責任=リスクとは、そういうものです。
フリーランスが「契約」するときって?
通常単発のお仕事でも、見積書や注文書のやりとりをすると思います。書面でのやりとりをしてない人はした方がいいです、取引先の規模によっては下請法違反ですし、お互いの認識を書面という形できちんとすりあわせをしておくのは、良い取引をするための必須にして第一条件です。
web屋の場合、単発ではなく、長期にわたって更新管理契約をする時には、NDAなど(秘密保持契約書)と一緒に、「業務委託契約」というのを締結することが多いです。お互いの責任の範囲、支払いの条件、トラブルが起きた際の対応などを明確にするためです。最近だと反社との関わり合いはダメよ、という契約内容が盛り込まれることが多くなってきました。
その一部として、損害賠償関係の条項があります。そもそも書いてない場合もありますが、ちらっとだけ触れている場合もあります。
たとえばこちらのひな形ですと、特に損害賠償について細かく書かれていません。
また、こちらのひな形の場合は、
(履行遅延の場合における損害金等)
第10条 乙の責に帰する理由により、期間内に委託業務を完了することができない場合において、期間経過後相当の期間内に完了する見込みがあると認めた時は、甲は、乙から損害金を徴集して期間を延長することができる。
2 前項の損害金の額は、頭書の業務委託料から、既に完了した業務委託に該当する委託料を控除した額に対して、○○○○の割合を乗じて計算した金額とする。
や
(乙の解除権)
第P条 乙は、次の各号の一に該当する時は、契約を解除することができる。
一 天災その他不可抗力により契約の目的を達成できないと認められる時
ニ 甲が契約に違反し、その違反により契約を履行することが不可能となったとき
2 甲の契約違反により、乙が契約を解除した場合には、甲はこれによって生じた乙の損害を賠償しなければならない。但しその金額は甲乙協議の上書面により定める
という形で、損害賠償について触れてあります。
契約書というのは、トラブルが起きた時のためのものです。トラブル時に自分が不利にならないための武器であり、防具です。もちろんトラブルはないに越したことはありませんが、お互いの悪意の有無に関わらず、話がこじれてしまうことはどうしてもあるでしょう。
具体的にどんな契約だったの?
ある時、久々に知人から連絡があり、「人手が足りない、業務委託契約をしてくれないか」という相談がきました。
二つ返事で打ち合わせに行き、悪くなさそうだったので契約書関係を送ってもらったのですが、そこでドン引きしました。
「なんかあったら賠償責任を無限に負ってね(*´∀`*)」
というのはオーバーな書き方になってしまいましたが、賠償金関係で「賠償金はもとより、諸費用含めてこちらで払え」とけっこう細かく、かつこちらに圧倒的に不利な形での契約だったのです。
制作会社様から下請として発注して頂く場合、コーディングだけとかWordPress構築だけとか、部分的に請け負うことが多いのですが、ディレクションについても請け負うという話もあったので、よりこちらとしてもシビアに契約内容を精査する必要がありました。
トラブりにトラブって、しかもお客さん(エンドクライアント)がゴネ出した時に、損害賠償だなんだと言われると、外部のディレクターとしては現実的に全部が全部は責任を負いかねるわけです。たとえばうちがディレクション、デザインは元請けの制作会社、コーディングはまた別会社となったときに、誰がどこまでどう悪くて、誰がどこまでどう責任をとるのか。
それを考えるだけで大変面倒です。。。
メールでも賠償関係は上限を設けてくれないかなど、いくつか質問や交渉をしたのですが、あまり芳しい答えは得られず。こりゃー困った、どうしようとなったのですが、ふと某社の社長が契約関係に強いことを思い出し、相談させて頂きました。突然ご相談させて頂いたにも関わらず、快くお時間を作って頂き、双務性がない(お互いが義務を負うべき所を一方的な契約となっている)というアドバイスして頂いたので、契約を見送る決意をしました。
その後は忙しい時期だったのもあり、契約についての返事をしそびれていたら、声をかけてきた社員が辞めたので、「こりゃーあかんわ」とフェードアウトさせて頂きました。。。(´・ω:;.:…
フリーランスは自分で身を守るしかない
業務上の過失で社員が損害賠償を求められることは、よっぽどでないとないでしょう。しかし外部のフリーランスや制作会社相手であれば、契約次第で当然そういった話になってきます。
正社員の場合、給料が未払いのまま会社が潰れても、8割は国が保証してくれます。しかしフリーランスは取引先が倒産しても、何の保証もありません。契約でも支払いでも、フリーランスは常に自分で自分の身を守る必要があります。
僕の場合は相談相手がいましたが、弁護士に相談するのも手です。30分5000円(税別)ですが、その後のトラブルを考えれば、保険として大変安いです。損害賠償とかなったら、数十万で済めば安い方でしょう。場合によっては3桁行くリスクを、5,000円とか10,000円で法的根拠を得て回避できるわけです。
「誠に申し訳ございませんが、弁護士に相談した結果、業務委託契約につきましては見送らせて頂くことにいたしました」とか言ってみたくないですか?(厨二病
契約書は書面も堅苦しく、どうしても面倒に思えますが、絶対に目を通しましょう。契約や仕事上のトラブルの法的解決については、下記の本が大変勉強になります。契約のテンプレートもあるので、本書を一読した上で、実際もらった契約書と見比べてみると、いろいろ違いが見えてくるでしょう。
なお、通常の受発注については以下の記事が、
・フリーランスのweb屋な人が、見積や注文書、請求書を発行する際の注意点。
『Web業界受注契約の教科書』のレビューも
・その契約書で大丈夫? フリーランスはもちろん、web制作会社も必見!『web業界受注契約の教科書』レビュー
大変参考になると思いますので、ご一読あれ!
「フリーランスはきちんと業務委託契約書を読まないとわりと死ぬ」に1件のコメントがあります