その契約書で大丈夫?フリーランス、Web制作会社必見!『Web業界受注契約の教科書』レビュー

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去年フォロワーさんから頂いて、一読して勉強になってたんですが、ちょうど新規に業務委託契約をするにあたって、ざっくり読み直したら、切実によかったので『Web業界受注契約の教科書』をご紹介。

どんな目次?

1部がトラブル例、2部がその法的根拠に基づいたアドバイスです。何がいいって、非常に具体的かつ実践的な例が多いのです。
以下、目次から第1部を。2部の細かい目次内容については、アマゾンの「なか見!検索」で確認できます。

第1部 Web受託制作でありがちなトラブル
第1章 契約成立・作業開始のトラブル
1-1 取引先企業から提示された契約書をよく確認せずに鵜呑みにして契約してしまった
1-2 企画提案から携わったが、発注者が制作段階で急に「制作会社を変える」と言い出した
1-3 発注書にサインしたのに「案件がなくなった」と言われ、請求にも応じてもらえなかった。
1-4 企業間コラボをしようと話をもちかけられデザインまで作ったのに、連絡が取れなくなってしまった。
第2章 作業内容変更・業務外作業のトラブル
2-1制作段階で想定していなかった修正や追加作業が後付された。
2-2無報酬で予定外の深夜、休日の対応を迫られた。
2-3スマートフォン制作で実機での閲覧について納得してもらえない。
2-4サイトリニューアルに伴い制作甲斐や変更のための引継ぎ作業を要求された。
第3章 検査・瑕疵のトラブル
3-1クライアントの確認が長引き「サイトを公開するまで請求は受けつけられない」と言われた。
3-2「デザインに納得ができないので、制作費は支払えない」と言われた。
3-3不具合、修正が重なり、納品完了後にクライアントのチェックがかかった工数分の費用を請求された。
3-4 外部サービスを利用したwebサイトで、外部サービスの不具合について制作会社に瑕疵を問われた。
3-5 納品後かなり期間が経ってから不具合対応を迫られた。
第4章 代金のトラブル
4-1 支払時期、振込手数料の負担に認識違いがあった。
4-2 納品後に請求額の減額をしつこく交渉された。
4-3 制作料金が入金予定日になっても入金されない。
第5章 著作権のトラブル
5-1 案件で開発したプログラムを流用されてしまった。
5-2 「他社が作成したデータからサイトを作成して欲しい」と言われた。
第6章 秘密保持のトラブル
6-1 自社のスタッフがTwitterやFacebookなどで制作中の情報を漏らしてしまった。
6-2広告代理店から依頼されたWebサイトを自社サイトに実績として掲載していたら、取り下げを要求された。
第7章 契約解消のトラブル
7-1 プロジェクトが頓挫したので、Webサーバーからデータを引き上げたい。
7-2 制作途中に一方的に契約を打ち切られ、制作物に対してしか費用を補償できないと言われた。
第8章 契約外のトラブル
8-1 レンタルサーバーの障害で、紹介したWeb制作会社の対応責任を問われた。
8-2 Webサイトを公開した1週間ごに「検索エンジンにヒットしない」とクレームが入った。

ね、凄いでしょ。長年制作仕事をしていれば、ひとつくらい心当たりがあるのではないでしょうか。僕もぼちぼちトラブルは経験していますが、「もしかして全部、実際あったことなの・・・」と同情を禁じ得ません。書き写していて辛いレベルです(´;ω;`)

どんな人が書いてる?

本書、レクシスネクシス・ジャパンという聞きなれない出版社(失礼)が出しているのですが、『Business Law Journal』という弁護士など法律関係者向けの専門雑誌を出しているような、法律関係の出版社です。書籍ラインナップを見ると、ガチガチの法律関係の本ばかりで、「わぁお」となります。

第1部担当の高本徹氏は8bitの常務取締役・Webディレクター。正直「8bitさんではこんな大変なことがあったのか」と涙無しには読めないのですが、「本書内で掲載しているトラブル事例はあくまで例であり、実際の企業、団体、個人などとは一切関係ありません」というお約束が明記されてるし、他社の人から聞いた話なんかもあるでしょうから、全部が全部8bitさんで起きたことだとは思いたくありません!違うよね、違うといって!!(´;ω;`)

第2部担当の藤井聡氏は現役の弁護士。「顧問先の90%以上はIT企業。Web業界の契約書の作成や、契約トラブルの対応に、豊富な経験がある(本書プロフィールより)」とあるように、たしかに第2部の内容は現状のweb業界に沿っていて、リアリティがあります。

フリーランスだけでなく、社員も読むと危機管理意識が高まる!

社員の方だと、契約書を直接確認する機会はあまりないかもしれません。が、社員の方も一読しておくと、いい意味で仕事に緊張感が持てます。実際裁判になることはそうないでしょうが、第1部の目次をみて分かるとおり、普段の仕事の中で起きうるトラブルばかりなので、リスクに備えて仕事のクオリティを上げる・意識を高めるという点でも、非常に勉強になります。

どんなとこが良いの?

大変ありがたいのが、上記第1部トラブル事例すべてに対して、個別に「法的にはこうなる」という回答とワンポイントアドバイスがあるだけでなく、「だからこうしておこう」という概論的な対策がきちんと書かれている点です。

契約において気をつけなければいけないのは、本書中にも「法律はあなたを完全には守ってくれません」と明記してあるように、「法律は必ずしも弱者の味方ではない」という点です。
制作者側からすれば、無茶振りしてくるクライアントに対しては、いざ裁判となれば、法が守ってくれると思うかもしれません。しかしそれも契約があってのことです。あくまで法は誰にでも平等であり、お互いにとっての武器となります。まずは契約書ベースの話になるため、「まあ大丈夫だろう」と不利な契約をしないように、きちんと契約書の内容を読んで、場合によっては確認・交渉をきちんとしましょう。

じゃあどう契約を見極めればいいのかというと、【契約書文言の参考例】として、受注者側・発注側それぞれに有利な内容が書かれた参考例があります。それを見比べると非常に勉強になります。これを書くと有利になる・書かないことで有利になる、というのが見えてきます。契約書フォーマットもCDで付属しているので、そちらでも一覧できますし、実際利用することもできます。独立したばかりのフリーランスの方は、こちらを基準にするとよいでしょう。
「~ここだけは押さえておきたい~Web業界 受託開発時の契約書チェックポイント」という1ページのまとめもあるので、そこで簡単にチェックするのもアリです。

契約書はトラブル対応の基準。自分に不利のないように確認。

フリーランスのwebデザイナー・プログラマーの方だと、業務委託契約書や、秘密保持契約書(NDA)をチェックする機会が出てきます。が、「当たり前のコトがかいてあるだけでしょ?大丈夫、大丈夫」と流し読みしてハンコを押してしまうかもしれませんが、さりげなく契約者側に有利なことが書かれている場合もあります。
トラブルが起きないにこしたことはありませんが、契約書って、要は「トラブルが起きた時にはこうしましょう」という取り決めなので、契約書を改めて確認するときはすでに臨戦態勢だといっていいでしょう。その時に、自分に不利な契約をされていたら、当然のごとく負け戦になります。
社員だと会社から損害賠償を起こされることはそうないでしょうが、外注先の個人事業主は損害賠償を起こされます。自営業は自衛業です。自分の身を自分で守る必要があります(オッサン風言葉遊び)。
独立して必要なのは、webの技術だけじゃありません。こういったところも、きっちり押さえておきたいです。

 

 

特にこれから独立を考えてる方は必読といっていい本です!。

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