ELLEGARDENのいなかった10年。

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その曲が流れてきたのは、ラジオからだった。

緊張感のある鋭いリフで始まり、期待を煽るようなハウリングの音がしたと思うと、日本人とは思えない英語の歌が少し甲高い声で聞こえてくる。緩急ある展開となによりサビの圧倒的な爆発力は、あまりにドラマティックであまりに暴力的で「僕が欲しかった音楽」だった。

ELLEGARDEN「Space Sonic」。

当時、僕は大阪の本町にあるWeb制作会社で、ディレクターをしていた。
7月に初めて正社員として入ったその会社は、案件を抱え込みすぎていて、「うちのHP、どないなっとんねん!?」と、日々顧客からのクレームの嵐だった(制作スピードもだが、僕の対応が悪いというクレームも多々なった。未だにクビにならなかったのは感謝している)。

平日は終電バッチコイな僕だったが、12月には年末進行というよりは、そもそもどうにも工数が足りないので、「ディレクターも土日も出勤してほしい」と会社から言われた時には、「何で僕の貴重な土日に、会社出なあかんねんクソが」と苛立ち、要請を無視した。ただ平日の出勤時には、本町の駅に降りると当時愛用していたCreativeのMP3プレーヤー、MuVo2からACIDMANの「type-A」を流して、テンションをあげて職場へと向かっていた。
帰りは京阪の京橋駅で、フランクフルトを食うのが密かな楽しみだった。

面倒な代理店の面倒な顧客を対応していたときだ。
職場で流しているラジオから、圧倒的な衝撃波が来たのは。
英語の発音もよければ、日本人離れした異様なテンションとセンスの良さに、てっきり洋楽だと思っていた。
何度か聞いて、ようやくバンド名と曲名が分かった。日本のバンドだと知り、更に驚いた。

2月に倒産宣言が出て、4月には東京の関係会社へ出張が決まり、バタバタしていたのもあるが、渋谷のツタヤでようやくアルバムを一通り借りた。
広大でこれから始まる予感に満ちた「THE END OF THE WORLD」、胸をかきむしる「花」や「指輪」。「右手」のどうにか希望を掴みたいという切実な願い、「風の日」の逆説的なやさしさ、将来への不安とこの暗闇を切り裂いてくれてる君の声=ファンの声援を歌った「ジターバグ」。
「こんな星の夜は すべてを投げ出したって どうしても君に会いたいと思った」とロマンティックな「スターフィッシュ」。やるせない失望から希望を抱かせる「虹」。そして「Space Sonic」が収録され、ラストアルバムとなってしまったELEVEN FIRE CRACKERS。一番密度が高くて、攻撃的でストイックでロックなアルバムだ。

僕は07年にそのまま東京で独立して、ELLEGARDENや、「ポリリズム」が出る前のPerfume、当時出たばかりの初音ミクをよく聴いていた。翌年5月、ELLEGARDEN、活動休止。
08年7月に発売された「ELLEGARDEN BEST 1999-2008」は、当初細美が「買わなくてもいい」という趣旨の発言をし、物議を醸した。

大学時代にハマったBLANKEY JET CITYやNUMBERGIRLも、よくやくリアルタイムで追いついたと思って、アルバムを買ったら解散した。
ブランキーはCMで流れていた「ロメオ」にシビれたのだが、『多重人格探偵サイコ』で再発見、アルバムをやはりレンタルしてダダハマりした。歌詞にもハマって、当時は何か言われたら、すぐにブランキーの歌詞に関連付けて言い返せる謎の自信があった。2000年5月、新作『Harlem Jets』を買ったら、中に「Last Dance」の告知が。アルバム自体も異様な緊張感があり、まさかとは思ったが、しばらく解散が信じられなかった。
NUMBERGIRLはサークル内で流行っていて、たしか『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』をタワレコかなんかの視聴でざっくり聴いたが、最初はピンとこなかった。が、塩田明彦監督の『害虫』をサークルの面々と観に行った時に「Num-Ami-Dabutz」のPVが流れ、「ギタリストがたぶんかわいいのに、なんで絶妙に顔を見せないんだ!(というか、この謎の音楽はなんだ!)」とショックを受け、改めて各アルバムを借りたらハマった。

そういう、やっと追いついたと思ったら、掌からすりぬけるように解散してしまうアーティストというのは、まま、ある。
ELLEGARDENもそうだった。
しばらくしてthe HIATUSの「The Ivy」を聴いて度肝を抜かれた。怒りや憎しみ、絶望、ありとあらゆるドロドロとしたネガティブな感情をぶちまけたような歪んだイントロから始まり、重くも開放感のあるサビ、そして救いに至るようなエンディング。

ELLEGARDENでの時折バカっぽい、若々しいロックより、the HIATUSは大人の激しさを見せつけてくれたが、3枚目のアルバム『A World Of Pandemonium』で今までとは違い肩の力が抜けて、より洗練された独特の世界観を打ちだした。

激しさを求めていたので、それ以降のthe HIATUSはいまいちしっくりこなかったし、ファンタジックなロックを打ち出した以上、こういったた方向性の音楽をやったあとだと、ELLEGARDENも復活できるのかと危ぶんでいた。
「活動休止」とはいえ、エルレの復活自体、正直あまり期待していなかった。残念ながらMONOEYESは未チェックなのだが、まさかこの日が来るとは、思いもしなかった。

ELLEGARDENのいなかった10年が終わり、俺らはオッサンになり、でもまだあの時の衝動や焦燥感を、胸の痛みを忘れていない。

2018年に、彼らはどんなロックを聴かせてくれるんだろう。

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