オリンピック・エンブレム問題の焦点はパクリではなく明確な「著作権侵害」。

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2015/9/7 19:00 追記:都々逸風の「サノケン降ろすにゃパクリはいらぬ、著作権さえあればいい。」というタイトルは不評なものの、中身は好評なので真面目なのに変えときますね!(*´∀`*)

オリンピックエンブレムの件、web系だけどデザイナーを自称してる者の端くれとして、書いておきたい。

問題点は何か

最大の問題は「パクリ≒類似するデザインの存在」ではなく、素材写真の許諾を得ないという著作権侵害を行ったことだと考えている。パクリとカブリは異なる。後者は意図せずに被ってしまう場合。ロゴの場合は特に、無意識に影響を受けていて、似てしまう場合などはロゴを作っていて実体験としてある。
パクリの故意性は立証が難しい。メールなどでパクリ元が明記してあるとか、よっぽどの資料が出てこなければパクリだと証明はできないだろう。しかしパクリとカブリと素材の著作権侵害は違う。パクリはグレーな部分が存在しうるが、著作権侵害は明確な意図もしくは不作為がある。

アルファベット一文字のロゴはカブる

そもそも今回のエンブレムの場合、非常にシンプルな構成なので、カブリが生じてしまう可能性は非常に高い。というか、既存のオリンピックエンブレムを見ると、アルファベット一文字をエンブレムにしたことはない。普通に考えれば、既存のロゴとカブるからだ。パクったわけでなくとも、ベルギーから物言いが付いたように、今回のような騒動は必然的に起こるだろう。

恥ずかしながら不勉強なので知らないが、そもそも世界規模のイベントでアルファベット一文字をモチーフにしたロゴなんてあり得るんだろうか。ロゴは独自性が重要視されるのはいうまでもないが、ましてオリンピックなら世界中の人々の目にとまるわけで、当然類似したものは発見されやすくなる。そういう点で審査委員がなぜこれを選んだのかが理解できない。
ましてコンセプトも変わってしまっているし、審査やそれ以降の修正の指示を含めて疑惑の目で見ざるを得ない。

写真の盗用こそ責められるべき

しかし審査やエンブレム自体は置いといて、カブリとは別に、「ない」ことで明確に故意がわかるのが、写真や素材の盗用だ。
佐野研二郎氏がアートディレクターを務めた多摩美術大学の広告にGLAFAS(グラファス)の写真が使用された? – GLAFAS(グラファス)からのお知らせ
連絡がない=無断なわけで、明確に著作権侵害を行っている。サントリーのトートバックのフランスパンもそうだ。写真利用の許諾さえ得ていれば、(「素材のコピペ」自体はクオリティやプライドとしていかがなものか、というのはあるが)合法であり、なんら問題は無い。それを「パクリ」というのは筋違いで、明確に区別しなければならない。

しかしパンやサングラスなど、簡単に撮影できるものなのに、許諾も得ずにネットから写真を盗用するというのは、印刷に耐えられる解像度なのかという点も含めて、非常に疑問である。まさか天下のサントリーがその程度の予算も出さないわけではないだろう。教授も務める母校のポスターでも著作権侵害を行っているとか、母校への侮辱でしかない。

サントリーの件では、部下であれば最終的に上司である佐野氏の責任になり難しいかもしれないが、外注していたのであれば、そのデザイナーに対して佐野氏は損害賠償の裁判を起こすべきだったろう。通常、業務委託契約をしているはずで、その中でこういった著作権絡みの既定もあるのが一般的だ。
少なくとも、プロジェクトとして何人デザイナーなど関係者がいて、誰がどの作品を作り、誰が著作権侵害をしたのかを明確に説明する責任はあったのではないだろうか。

オリンピック関連の仕事で著作権侵害を行うリスクがある、と思ったら。。。

「部下のせい」とのことだが、素材の著作権を守るなんてイロハのイだ。僕はサントリーの事件が発覚した時点で、アートディレクターとして素材の著作権も守らせられないのなら、佐野氏はオリンピックエンブレムを降りるべきだったと考えていた。
エンブレムが決まった後は、おそらくオリンピック関連の仕事が発生するわけで、その際にも著作権を守らない可能性があるからだ。そう考えていたが、実際すでに「展開例」として使われていた写真が盗用であると判明した。

デイビッドさんのブログによると、画像の使用について連絡はなかったという。
東京五輪エンブレム、「展開例」の画像に盗用か 組織委が調査中 元の写真の主「聞いてくれればよかったのに」 – ITmedia ニュース

すでにやっていたとは思いもしなかった。もう、決定的にダメでしょう。
エンブレム自体のクオリティは議論しても仕方が無い。主観・好みによる部分が大きくなってしまう。被ってるかどうかも、この際問題ではない。パクリではないというのであれば、デザイナーとしてのプライドを賭けて、裁判で徹底的に争えばいい。
が、著作権を侵害するのは今後のオリンピック関連の仕事で支障が出る、その一点だけで佐野氏はオリンピックエンブレムの作者という栄誉に浴するには値しない。

著作権意識の足りなさについては、特にオリンピックの空港写真では、コピーライトを削るという悪質な行為を行っている。ブロガーへの連絡などメール一通で終わるし、今までの実績を紹介して「とある仕事で使いたい」といえば、許諾を得られる可能性は高いだろう。それさえしなかったのだ。

家族や部下への誹謗中傷などは、当然すべきではないが、デザイナーの端くれとしては、明確な著作権侵害は声を大にして批難する。むしろすべきだろう。でないと、業界の自浄作用が働かない。著作権侵害を許すのは、法的な問題としてクライアントに時限爆弾を仕込むようなものだ。デザイナーは著作権侵害を許さない、と主張するのは職業的な社会的責務だろう。「シロートにはデザインが分からない」などと放言するのは、明らかに矛先が違う。

 

最後に2点ほど。
提出案から決定案への経緯はコンセプトが変わっているなど不鮮明で疑問が残るが、経緯はともあれ、決定案はそのコンセプトを踏まえるとパクリではないと思う。不幸な偶然だと思いたい。
エンブレム自体に関してはもし本当にパクってないのであれば、直接的にはエンブレム以外の案件の不手際から始まった自業自得とはいえ、佐野氏にとっては、エンブレムをパクリ、パクリと言われるのは、あまりにも不条理な悪夢だろう。それは頭の片隅に置いておきたい。

新しいエンブレムの作者がこういった炎上に巻き込まれず、世界中から愛される新エンブレムが無事決まるのを、願ってやまない。

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オリンピック・エンブレム問題の焦点はパクリではなく明確な「著作権侵害」。” への2件のフィードバック

  1. いや、エンブレムもパクリだ。
    なぜならリエージュ以外のモチーフが出てきていない。

  2. サノケンは今後、知名度的にも「著作権守らなきゃダメ絶対♪」っていうキャンペーンのエバンジェリストとして社会貢献したらよさそう

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